SNUG Journal

「SNUG Journal」は毎週金曜日に発行! 対話のプログラム設計や教育、ファシリテーションを行う 「対話の場づくり屋 SNUG」の活動レポートや代表の考えなどを発信します。

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 対話のプログラム設計や教育、ファシリテーションを行う 「話し合いの場づくり屋 SNUG」の活動レポートや代表の考えなどを発信します。

【第16号】SNUGの長谷川友子ってどんな人?SNUGの歩みとは?ユースインターン「う〜さん」が深掘りします

「SNUG Journal」 へようこそ!

  対話の場づくり屋 SNUGにまつわる情報や活動内容、対話に関するトピックを毎週金曜日にお届けします。ライターはSNUG代表の長谷川友子です。

 さて、今回は第16号。前回はSNUGで1年半ほどユースインターン生として活動している「う〜さん」に長谷川友子がインタビューしましたが、今回はインタビュアーをスイッチ!ユースインターンから私に逆インタビューしてもらいました。

 今回は二人の対話をお送りします。インタビューを通して、SNUGの変遷や長谷川友子について知っていただき、より私たちを身近に感じてもらえたらと思っています。

 今回も、ぜひ最後までお読みください!

 

これまでのあらすじ

unitsnug.hatenablog.com

さて、飲み物を追加オーダーして「う〜さん」によるインタビューがスタート!

私はレモンジンガーに。

最初は長谷川友子のこれまでについて…

う〜さん:ではまず、雑談っぽいところから始めます。ゆうこさんのバックグラウンドから聞けたらと思いますが、ゆうこさんがこれまでに影響を受けたものはなんですか。なんでも教えてください!

 

ゆうこ:…いきなり難しい(笑)。でも、一番は演劇かな。私は高校生のとき、TEAM NACSに憧れていました。それで、札幌の地下劇場で演劇をしていました。

2015年3月 MAM「月ノツカイ」より左が私です。

 

 最近よく思い返すことがあります。一番最初に出た舞台の演出家の方に、役者をするときにとにかく「うまくやろうとするな」と言われてきました。小手先でなんとかするな、と。その言葉は私にとって大きかったのかも。

リリカル・バレット 1/2SHOT vol.4 「キミトオク」(2013年)の
舞台セットから見た客席の写真。

当時の写真…。

 今思うと、私にとって、演劇と対話は似ているところがあると思います。演劇は稽古して、何回も本番があります。映画と違い、演劇は再現できることが大事。その場で起こることを大事にしながらその場を成立させるということは、なんだかファシリテーションと似ているかもしれません。

 

う〜さん:初めて聞きました…!! 
実はこのインタビューに向けてSNUGの資料をいろいろ見返していました。そして、過去のゆうこさんのプロフィール案を持ってきました(資料を出す)。

ゆうこさんのプロフィール案の文章中に、「フィクションから現実の社会に関心が移った」とあります。Webサイトに掲載されることはありませんでしたが、ここに書いてある「フィクションに関心があった」とは…?

 

ゆうこ:私の原点は芸術です。芸術に対する関心一本で20歳くらいまできました。でも今は社会問題や公正な社会に向けた対話の場づくり屋をしています。今に至った経緯をお話しますね。 
 現実の社会は私にとってはハードでした。学校への馴染めなさや辛いニュースまで、自分にとって苦しいものからの避難所が私にとっては美術や音楽や演劇でした。

 二十歳前後までは「どんなときも芸術があれば救われる」と本気で思っていました。そして絵や演劇だったら自分の世界をつくれるのではないか、とも。自分の世界をつくることができたら、誰かが見てくれて何かが変わるのではと思っていたのだと思います。

 大学生に入ってからは授業外で友人たちと一人芝居をつくったり、展覧会運営も行いました。

友人とつくった一人芝居の公演の様子。

友人たちと実行委員を立ち上げ、
展示作品と公演作品どちらも鑑賞できる展覧会も運営しました。

 その後、それまでの不眠や諸々が重なって、うつ病になり大学を休学します。

 うつ病になったというのは私にとっては大きな出来事でした。というのも当時の私は芸術を見て感じる感性もなくなり、「私にとって芸術は万能でないのだ」と痛感しました。薬や治療ってすごいなとも思いました。

 若干引きこもりの期間も経て少しうつがマシになると、実家の近くにあった「NPO法人みなと計画」の事務所兼ラーメン屋兼カフェである「Café&noodles menkoiya(通称めんこいや)」に遊びにいくようになりました。めんこいやの橋本ご夫妻は「何も頼まなくても来ていいよ」と白湯を出して迎えてくれました。

 めんこいやでイベントの手伝いをしていたときに出会った友人が、対話のイベントに関わっていました。私は何気なくそのイベントに参加し、初めて「ファシリテーター」を見ました。衝撃でした。「みんなが対話できる場ってつくることができるのか!」と。

 それで、同じメンバーがファシリテーションしている「札幌市みんなの気候変動ゼミ」という札幌市環境局主催のワークショップに「ファシリテーター見たさ」で参加しました。当時の私は気候変動や社会課題に関心があるわけではありませんでした。でもワークショップに通ううちに気候変動について改めて知り「なんかやばいかも」と思いました。

 いや、いろいろ現実社会がやばいのは知っていたけれども、ずっと考えることから逃げ続けてきました。でも気候変動ゼミは、気候変動について関心があまりない私も受け入れてくれる対話の場だったので私のペースで気づき学ぶことができました。

 私にトドメを刺したのが、「紙を見て雲を思う」という言葉でした(※1)。この言葉は「雲があるから雨が降り、雨が降るから森林が育ち、森林が育つから紙ができる」というような意味です。当時の私は「紙を見て雲を思うくらいの想像力を持ちなさいよ」と発破をかけられたように感じました。

 私はこれまで芸術を通して「想像力を持つことが大事」と思ってきたけれども、例えば紙やキャンバスが地球の資源であることは考えていなかったことに気づきました。

 つまり、私は現実世界のことを全然想像していなかった、考えないようにしていた…。とてもショックでした。

 その言葉をきっかけに、私の想像力をフィクションから現実社会に向けようと思いました。私は今起きている社会のことも想像したいなと。そのためには対話の場が必要だと思い今に至っています。

 もちろん今でも芸術は好きですし社会に不可欠だと思っています。でも、私がやらなくてもいいなと思いました。

 これが、「フィクションから現実世界に関心が移った」と書いた経緯なのですが、わかりづらいですね。プロフィール文に採用しなくてよかった(笑)。

 

SNUGの内容について対話は進みます

う〜さん:お仕事じゃないゆうこさんについてあまり知る機会がないので新鮮です。 
…ではぼちぼち、対話やファシリテーターについて聞いてきます。
改めて、対話やファシリテーターってなんですか。

 

ゆうこ:「対話」や「ファシリテーター」ってたくさん定義がありますよね。私は「目的に向かって話したり聞いたり一緒に考えること」と説明することがあります。

 が、対話にもいろいろあるし、その場にいる人たちやその場の目的によっても正確な意味は変わってきます。だから、言い換えるなら「話し合い」。

 でも「話し合い」だと「話す」に重点が置かれてしまう気がして、「話し合い」という言葉はあまり使いません。

 「聞くこと」「考えること」「一緒にそこにいること」も「話す」ことと同じくらい大事なことだよね、という思いを込めて「対話」という言葉を使っています。

 「ファシリテーター」もまたいろいろな定義があります。私が考えるファシリテーターとは、その場にいる全員が対話に参加できるよう参加者をサポートする役割や仕事のことです。

 

う〜さん:ありがとうございます。今言ってくれたことと被るかもしれませんが、ゆうこさんが思う「対話」と「会話」の違いはなんですか。

 

ゆうこ:私なりの捉え方だと、「会話」は話すことやコミュニケーションを取ること自体が目的です。友達とおしゃべりしたり、雑談したりも会話の例かと。

 一方「対話」は、話し合う過程も大事ですが、話した結果何が起こるかな?ということも大事なものと捉えています。

 

う〜さん:はぁー!なるほど。ありがとうございます。次はこっちを聞こうかな…。
ゆうこさんはよく、よりよい対話は「公正な対話」だと言いますよね。
対話の中の公正さや、ゆうこさんが思う公正な対話の必要性について教えてください。

 

ゆうこ:私はただ対話するだけでは不十分だと考えています。

 特定の人ばかり話していたり、思っていることがあるのに言えない人がいることは不公正ですよね。私は、よい対話において大きく影響するのは「個人のコミュニケーション能力」ではなく「集まった人たちの中にある力関係」だと考えています。

 だから「社会構造を踏まえた上で対話をしましょう」という意味を込めて公正な対話が大事だと考えています。

 属性によって偏見を向けられること、被差別経験を持っている人や属性、いろんな個人のバックグラウンド…それらを考慮せずに「自由に対話しましょう」としてしまうと、対話で起こることは日常で起こることの再生産になるかなと思っています。

 もちろんある程度の非日常性を持たせることで、対話を日常の会話よりも質を高めることはできると思います。でも対話はもっと実用的で、変化を起こす力があると思っています。

 対話の場って、いろんな人が集まっているし力関係も存在しますから「小さな社会」と捉えることもできます。

 対話の場は、今ある社会構造を変えていけないかと考える場であり手段であると捉えています。

 

う〜さん:ちょっと確認しますね。公正な対話じゃないと日常で起きていることを繰り返すことになってしまう。だから小さい社会として対話の場を見たときに、社会構造を…なくす?ということですか。

 

ゆうこ:対話の場の中で社会構造を完全になくすのは難しいし、すぐには無理だと思います。だから…対話の場で社会構造を問い直す、というのが近いかも。

う〜さん:なるほど…。大事ですよね…。
では、ゆうこさんが考える対話の場に影響する社会構造にはどんなものがありますか。

 

ゆうこ:年功序列的な価値観や男性優位な構造、そして経験至上主義的な価値観かなと思います。

 年功序列的な価値観はどういうことかというと、圧倒的に年上の人や年配者が対話の場で発言しやすく、比較的年齢が若い人が発言や自由な態度を抑圧される傾向などのことです。

 例えば、ユース世代が対話の場にいるとしばしば大人がユースに対して「若いのにすごいね」と言っているのを目にします。一見褒めているように見えますが、言われたユースはいい気がしないことも多いです。なぜなら、ユースを個人ではなく「若い人」という属性として見ていますよね。

 もっと言うと、「若い『のに』」という言葉は「(本来)若いということは未熟なはず」という無意識の偏見だと捉えることもできると思います。

 男性優位というのは言わずもがなですが、特に日本はジェンダーの格差は大きいので女性は対話の場で抑圧される傾向にあります。

 例えば通称マンスプと言われるマンスプレイニング。男性が女性に対して自分が持っている知識をひけらかしたり、相手が物事を知らないと決めつけて解説したりして相手の時間や労力を奪うことはよく見られます(※2)。

 経験至上主義的な価値観とは、先に上げたものと重なる部分もありますが、とにかく「経験している人が偉い」というような価値観だと思っています。

 例えば「社会に出ていない若者には伝わらない」「慣れたらわかるよ」「俺ができたからあなたもできる」などという言葉に表されるように、経験者が、経験が浅い人のことを軽視したり、求められていないアドバイスをする態度はよく見られます。

 このほかにも対話の場にいる人が持っているマジョリティ性、マイノリティ性は対話の場に影響します。だからこそ社会構造を理解したファシリテーターが対話の場に入る必要があると思っています。

 

SNUGリニューアルとその背景とは…?

 

う〜さん:ありがとうございます…。「任意団体snug」から、「対話の場づくり屋 SNUG」となったときに心境の変化はあったのですか。スナッグが大文字になりましたね。

 

ゆうこ:めちゃ大きな心境の変化がありました。このあたり、う〜さんの進路準備も重なってちゃんと説明していなかったね…。

 実は、私は2023年の9月くらいまで、ほかの場所で稼ぎながら対話の場づくりをしていこうと思っていました。

 これまでにもいろいろな場所で非正規雇用で働いてきました。ただ私は多動傾向にあり、同じ場所に通うこと、座り続けること、時間までその場にいなくてはいけないことが苦手で、ずっと困ってきました。そして数ヶ月前に、いよいよ「どうやら私は本当に『普通に』働くことが苦手だ」ということがわかりました。

 大文字SNUGになる前までは、どこかで「本気を出せば雇用されて働けるもん」と思ってきました。でも、いろいろ試したけれど無理だった。

 それをかかりつけの心療内科の医師に相談したところ、医師は声高に(?)「マイノリティとしての働き方に邁進せよ。」とおっしゃいました。そして、「あなたの仕事の内容やスタンス、考えをしっかり発信しなさい」とも。

  それで、Webサイトのリニューアル、InstagramやこのSNUG Journalの開設を進めました。私の仕事を知ってもらうために「対話の場づくり屋」というキャッチフレーズもいろんな方に相談して考えました。

新しいロゴもできました!

 

う〜さん:確かに、大文字SNUGになってからはちげえな、と思いますよ(笑)。何が違うかって言われたら難しいですけれど…。でも、態度が変わったんでしょうね。

 

ゆうこ:大文字になるまで、私の中に「いろいろやらせてもろてますけど…(照)」みたいな照れや謙遜があったかもしれません。もちろん誠実に仕事をしてはいましたけど。

 でも大文字SNUGになるにあたって、謙遜するのもやめなきゃな…と。実は「社会課題に取り組む」「対話を大事に」と言うことが心の底では恥ずかしいと思う時期もありました。でも、いいかげん照れるのやめようと思って。大事なものは大事だし。

 

う〜さん:それこそ、ゆうこさんから照れている感じが抜けましたね。インターンして一年目のときに、ゆうこさんは「対話の場で女性だし若いから舐められるかも」と私にこぼしていました。そのときの雰囲気が今はないです(笑)。

 

ゆうこ:まあ、よく舐められますけどね。でも今は「舐めるなら舐めてください」という感じ。とカッコつけましたがよく凹むし落ち込みます(笑)。

 

う〜さん:最後に、ゆうこさんがユースに見出している価値を教えてほしいです。ユースの教育事業やリーダーシップ研修などをしているということは、若い世代に何かを見出しているのだろうと思っていますが、どんなことですか?

 

ゆうこ:なぜここまでユースに拘っているかというと、さっき話した社会構造によってユース世代が抑圧されているからです。ユース世代が「すごいから」「ユースに価値を見出しているから」というよりも、ユース世代の身に起きていることが社会に伝わっていないという強い課題感があります。

 例えば、ユースが感じていることや不安を口にしたときに、大人によく聞かれずにアドバイスされてしまう。ユース世代って、めっちゃアドバイスされていると思います。もちろんアドバイスは時に大事ですが、いつもアドバイスされていては「自分の発言に影響力がないんだ」「大人の話を黙って聞いていたほうが丸く収まる」というふうに思っちゃいますよね。それではユース世代は自己効力感がなくなって当然だなと思います。

 また、ユースはアドバイスのほかにたくさんのジャッジにさらされています。例えば何かユースが声を上げたときに、「まず勉強しろ」「稼いでから物を言え」というような価値観が色濃く存在します。

 そんな中だと、大人に対して「いい子」にならざるを得ないなと思います。一方で、「若者らしさ」も社会から求められます。例えば、「若者ならではの自由なアイデアを」とか「新しい価値観を」というような言葉で。

 だからSNUGは、ユースのエンパワーメントのためにも対話の場づくりを大切にしています。

 さらにユース世代がこれからの社会を生きていく上で必要なリーダーシップを学ぶことができればと思い、その一つの手段として「対話の技術」、つまりファシリテーションやグラフィックレコーディングを学ぶ場づくりや研修もしています。

 ユース世代がエンパワーメントされ対話を学ぶことで「それって偏見じゃない?」「それってアドバイスじゃない?」というような視点を自ら持てるようになり、自身の抑圧から逃れるきっかけになればと思っています。

 

う〜たん:ユースが抑圧されていることは聞いていたけれど、深い背景を聞くことができてよかったです。…すごく共感します。
改めて、インタビューするのもされるのもめっちゃ楽しかったし、学びもたくさんありました。今までの活動を振り返ってみて、約1年半の間に色々なことを学ばせてもらったと改めて感じました。これからもよろしくお願いします!

二人の飲み物もなくなったところでそろそろお開きに。

SNUGからのお知らせ

 2024年2月24日(土)14:00〜17:00は「さっぽろ気候変動タウンミーティング」です!

 第5回目は「市民参加や市民活動が生まれるまちの姿とは?」というテーマで開催します。

 講師には若者の社会参加やスウェーデンの民主主義や若者政策をご研究している両角逹平さん(日本福祉大学社会福祉学部 講師)をお呼びします!

フライヤーはこちら!

 直前までお申し込みを受け付けていますので、ぜひこちらからお申し込みしていただきタウンミーティングにご参加ください!私はファシリテーターとして皆さんをお待ちしてます。

 タウンミーティングの様子や活動をコーディネーターや参加者目線で発信中です。こちらも併せてお読みくださいね!

note.com

結び

 さて、前回から続くインタビュー企画が一旦終了です。インタビューをしてみて、改めて対話することで言葉になること、考えることもたくさんあるなと思いました。

 今回の対話を通して学んだことがありました。それは、今までSNUGとしてユースへの遠慮があったなということです。どうしても「私なんかが」と思ってしまっていたなと。

 これからのSNUGは、ユースに対して「ここにいてもいいんだよ」と胸を張って伝えられるようにしたい思います。なので、来年度からのSNUGのインターンやそのほかの関わり方の仕組みを考えようと思っています。

 何よりSNUGインターンであるう〜さんに感謝しています。いつもありがとう(このブログの校正もサポートしてくれました)。そしてSNUGを支えてくださる皆さんに感謝しています。

 さて、今週も読んでくださってありがとうございました!今回もボリューミーでしたが、みなさんいかがでしたか。ぜひ感想も教えてください。

 さて明日はタウンミーティング。どんな場になるのか楽しみです。

 それでは、来週もSNUG Journalでお会いしましょう。

 

2024年2月23日(金)20:00
対話の場づくり屋 SNUG
代表 長谷川友子

 

参考

(※1)のちにティック・ナット・ハンという修行僧の言葉だということを知りました)

(※2)「マンスプレイニングとは・意味」https://ideasforgood.jp/glossary/mansplaining/(最終閲覧日2024年2月23日)

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