「SNUG Journal」 へようこそ!
「対話の場づくり屋 SNUG」にまつわる情報や活動内容、対話の場づくりに関するトピックを毎週金曜日にお届けします。ライターはSNUG代表の長谷川友子です。
札幌は桜も散り終わりそうで、葉桜がいきいきとしてきました。
さて、今回は第24号。前回のSNUG Journalでは、私ゆうこ自身のスタンスの変化についてお届けしました。
今日は前半ではSNUGが関わった報告書について、後半はSNUGが考える「SNUGの対話の場づくりとファシリテーター新解釈」についてお届けします。
今週もぜひ最後までお読みくださいね!
SNUGが事前ヒアリングとして関わったユース世代に関する調査が報告されました!
SNUGの長谷川がヒアリングをお引き受けした関西NGO協議会の2023年度のアンケート調査報告書「中高大学生を対象とした自分・社会・世界に関するアンケート」が公開されました。
長谷川友子は関西NGO協議会さんがアンケート調査をとる前の事前段階で、担当者さんへユース事業に関わる者としてユースに対しての考察をお伝えしたり、設問づくりに関しての助言等を行いました。
kansaingo.net この報告書には、1259名のユースが回答しており、ユース世代のリアルな声を知るきっかけになると考えています。ぜひユース世代に関わる方、サステナビリティに関わる方はこのアンケートを読んでみてください!
リアルな声がわかる部分の例として、このアンケートの「SDGs について、ご自身の考えに近いものを選択してください」という設問の「その他」の回答を見てみましょう。
・何かしたところで実感が湧かない(女性・大学生)
・SDGs という言葉ばかりが先行し、実際の行動はあまり変わっていないように感
じる(その他・大学生)
・まるで押し付けられるかのように、過剰に SDGs が主張されるため、大事なこと
とは分かっているが、乗り気になれない(男性・高校生)
・現実的では無い部分が多すぎる(男性・大学生)
・不可能な達成目標(男性・大学生)
・思想自体は肯定するが、利権が絡んでいて気味が悪い(男性・大学生)
・SDGs がきちんとした理解を持って、認識されるものはするべきだが、飾りとし
てバッジをつけている人はどうかと思う(女性・大学生)
・人間のエゴ(男性・高校生)
・学校の授業で取り組んだが、生徒も先生も、授業以外では非協力的(女性・高校生)
・せっかく目標を掲げているなら、達成できるような努力をもっとしっかりやるべ
き(女性・高校生)
・行動が進むきっかけになっていると感じる(女性・大学生)
・あまり知らない(女性・高校生)
・特に何も考えていない(女性・高校生)
また、「今の日本の大人・社会について、どう感じていますか。正直な気持ちをお聞かせください」という設問にも注目です。
回答者は5段階評価で、「1(とても不満)」から「5(とても満足)」から選択します。
結果は、「1(とても不満)」「2」を選んでいるという人の割合は35.3%、29.4%と比較的不満を感じているユースの割合の合計は64.7%と見ることができます。
一方、今の日本の大人・社会について「5(とても満足)」「4」と答えている割合はそれぞれ2.9%、5.9%と極端に低い割合です。
こうしたアンケート調査は、設問のあり方も結果に重要になると考えています。「正直な気持ちをお聞かせください」という丁寧な訊き方は、ユース世代のより正直な意見を引き出しているのかなと考察します。
さて、この章を締めくくるために、この報告書の「おわりに」から一部抜粋します。
日本のユースに関しては、(中略)極端な自己責任論や自己肯定感の低さなどが指摘されることもあります。それらに対しては、関心を高めよう・自己肯定感を上げようという方向でのアプローチが取られがちですが、本来は、その背景・原因がどこにあるのかをきちんと分析し、それを踏まえた、視野をより広く持った対策がとられるべきなのではないでしょうか。このアンケート結果が、そうした見えづらい部分・表面化しにくい要素に、私たち大人・社会が今後より目を向けていくための端緒となるこ とを願います。
(「中高大学生を対象とした 自分・社会・世界に関する意識調査アンケート 調査結果報告書2023」p70「おわりに」より一部抜粋)
多くの書籍や記事から、若い世代を「理解できない、わけのわからない存在」というように対象化し、安易なハウツーで起きた問題に対処しようという流れも感じます。
「今の若者は進んでいるんでしょ?」「時代は違うよなあ」と一見持ち上げるような距離の取り方ではなく、一人の大人に対するような最低限の尊重の姿勢が大人に求められていると感じました。
これからの対話の場づくりとファシリテーター新解釈
前回のブログで、私は自身のマジョリティ性にも目を向けて活動する必要があると認識したということを書きました。
今回は、SNUGとして「ファシリテーター(ファシリテーション)」をどのように捉えているのかについて書きます。
「対話の場」という言葉にピンとこない方は、いろんな人が集まって話したり聞いたり学び合ったりしている風景を想像してみてください。例えば学校で、例えば職場で、例えば地域で。
SNUGが大切にしていることとは?
社会やコミュニティには、人々が暗黙に共有しているルールや規範などが存在しますよね。
例えば、年上には敬語を使うのが礼儀とか、仕事で会った人には名刺交換をするとか、講師には「〜先生」と呼ぶとか。
SNUGは、日常的な社会の規範を問い直しながら対話のあり方を模索することで、一人ひとりの充実した参加体験と関係者のニーズを満たすことを目指しています。
そして、対話の場づくりという言葉のとおり、「対話の場やそのあり方を変えたり、つくることができる」と考えています。
SNUGが考える対話の場づくりの内容とは?
SNUGが考える「対話の場づくり」の技術を分解すると、二つの役割があります。
対話の場をデザインし提案し準備する「コーディネーター」と、対話の場に入って参加者とともに対話の場をつくる「ファシリテーター」です。
「コーディネーター」は、プログラム当日までに対話の場を開く準備をします。対話の場にあらゆる人が参画できるようにするには、関係者のニーズを踏まえながら、関係者やそうでない人ともあれこれ提案したり相談する必要があります。
例えば講師を呼ぶプログラムの際はジェンダーバランスが偏っていないか、会場選定の際はどのような人がアクセス困難かを見極め調整します。
次は、対話の場の中に入ってプログラムを実施するファシリテーターについて。
SNUGのファシリテーター新解釈
ファシリテーターの定義について、語源の「facilitation」を用いて「話し合いなどを『容易にする』『促進する』役割」と説明されることも多々あります。
ただ、ファシリテーターという言葉が以前に増して使われるようになった現在、SNUGなりの解釈をします。
辞書の説明の位置でいうと「転じて」のあとにつく文章のような気持ちで、SNUGはファシリテーターを以下のように定義します。
「対話の場において参加者の力関係を考慮しながら、参加者の権力の再配分をする役割や人のこと」
なぜ参加者の力関係を考慮する必要があるか。それはSNUGが対話の場を「小さな社会」として捉えているからです。
実際の社会には、先輩後輩や上司部下などの上下関係から属性による構造的な力関係まで、様々な力関係がありますよね。力関係の中では、自分の意見を言うことが容易な人とそうでない人が存在します。
そのような力関係は、小さな社会である対話の場でも生まれます。
多様な参加者が集まる場合はもちろん、ユース同士や同じ会社同士など似たような属性が集まる対話の場であっても、年齢やジェンダー、障害の有無や見た目の特徴などによって発言しやすい人と発言しにくい人が存在します。
ファシリテーターは対話の場において、自身の権力を使い参加者の発言を遮ることも話を続けることを促すこともできます。つまり、自身の権力を使って発言権を分配できる役割とも言えるでしょう。
だから、SNUGはファシリテーションの際には話をまとめたり、結論を導いたり、場を円滑に進めることに重きを置いていません。
参加者が本来持っているパワーを持てるようなファシリテーターのあり方を模索しながら参加者とともに公正な場づくりを目指し、関係者と協力しながら充実した対話体験の提供を目指しています。
結び
…さて、みなさんは、どう感じましたか?とても気になります。
気づけば5月、ゴールデンウィークも後半に差し掛かりました。なんだか掴み所のない季節。朝夕の冷え込みが激しく、今は暖房をつけています。
と思えば暑い日もあったり。気候危機の影響を重く受け止めながら、まずは現役世代の我々が心身ともに健康でいなくては。声を掛け合いながら、ケアしあいながら、お互いメンタルヘルスを保っていきましょう。
それではまた来週、ここSNUG Journalで!
2024年5月4日
対話の場づくり屋 SNUG
代表 長谷川友子