SNUG Journal

「SNUG Journal」は毎週金曜日に発行! 対話のプログラム設計や教育、ファシリテーションを行う 「対話の場づくり屋 SNUG」の活動レポートや代表の考えなどを発信します。

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 対話のプログラム設計や教育、ファシリテーションを行う 「話し合いの場づくり屋 SNUG」の活動レポートや代表の考えなどを発信します。

【第6号】SNUGが「ユース」への取り組みを大事にしているわけとは?〜きっかけ編〜

「SNUG Journal」 へようこそ!

 話し合いの場づくり屋 SNUGにまつわる情報や活動内容、対話に関するトピックを毎週金曜日にお届けします。

 今回は私(長谷川)が風邪を引いてしまったため、土曜日の発行となりました。もし楽しみにしてくださった方、お待たせしました。

 さて、今回は第6号。SNUGがなぜ「ユース」を大切にしているのか、具体的なエピソードを交えてお知らせします。
 ユースとSNUGは切っても切り離せない関係。ぜひ最後までお読みください!

 

そもそもSNUGがいう「ユース世代」って?

 「ユース世代」とは様々な定義がありますが、SNUGとしては15〜25歳くらいの人々のことを指しています。ざっくり「若者」というイメージでも大差ないかなと思います。
 細かい年齢にあまりこだわりはなく、私たちが注目している点はユース世代がおかれている社会的な立場や現状です。

 私たちはユース世代を大まかに「社会人としての暗黙知やビジネスをする上での常識にとらわれない人々や世代」と捉えています。

 

SNUGがみるユース世代の現状とは?

 SNUGは「ユース世代は大人(現役世代)によって抑圧されている」と現状を見ています。つまりユース世代は「マイノリティ」であると考えています。

 マイノリティとは直訳すると少数派という意味ですが、ここでは二つの側面から考えます(※1)。
 一つは数的に少数であること。日本は少子高齢化と人口減少により、ユース世代や子ども世代の数は大人に比べて少ないですし、これからも減少することが予想されていることから、ユース世代はマイノリティであると言えます。

 二つ目の側面は、社会的なパワー(権力)が少ないという点です。

 社会的なパワーが少ないということは、例えばユースが意思決定の場に参加できない、またはしづらかったり、ユースの声や意見が聞かれない、届きにくいということなどを指します。

 今回は二つ目の社会的なパワーが少ないという側面からユースの社会的立場を考えてみましょう。

 

 ちなみにこのブログを書いている私はSNUGの活動を始めた当初は若者をカテゴライズすることに対してむしろ懐疑的でした。

 ユースでも大人でもいろんな人がいるし多様なはずだから、あえて世代として話す必要はない、と。

 しかし、2020年秋に開催された「北海道メジャーグループプロジェクト2020」内「ユースグループミーティング」にファシリテーターとして参加する際、プログラムを設計するために行ったヒアリング(インタビュー)にて「ユース世代はかなり抑圧されているのでは」という問いが生まれます。

 …ということで、話が2020年、今から3年前に戻ります。

企画で使用していたイラスト(PCの奥底から持ってきました)。

ユースへのヒアリングから見えた現状

 ユース世代が集まるプログラムをつくるにあたり、15名ほどのユース世代に現状や将来のことについて1人約1時間ほどの1対1でのヒアリングを行いました。

 「現状に満足しているか」「どのような将来を望むか」という二つの問いをもとに、カフェやzoomなどでカジュアルな形式での聞き取り調査を行いました。

 結果、2名をのぞくユースから「現状にはおおむね満足している」という回答を得ました。
 
 一人ひとりと時間をともに過ごすにつれ、ヒアリングへの協力者は、過度な職場への適応を求められ戸惑っていること、生理が日常に支障をきたしていること、(生理とは別の)心身の健康が損なわれていること、セクハラ・パワハラの被害にあっているということなど日々の抑圧を言葉にしてくれました。
 印象的だったのは「こんなことを誰かに話したのは初めてだ」という声が多かったことでした。
 

 また注目すべきは、切実な課題を語ったヒアリング協力者の多くは、ヒアリングの最初に「現状におおむね満足している」と答えていたのです。

 その理由を尋ねると、多くのユースは「衣食住があるから」と答えました。

 ウェルビーイングサステナブル、いろんな言葉が聞こえてくる社会の中、ユースは大きなビジョンどころではないのだなと率直に感じました。


「ユースグループミーティング」で見えた自信のなさ

 ここまでが企画前段のお話。

 ヒアリングから「自分の考えを安心して話すことのできる場所がないことから、未来を想像するのが難しい」という課題を設定し、全5回のユースグループミーティングが開催されました(主催:北海道地方ESDセンター)。
 

 その際の記録がこちら。

(グラフィックレコーディング:当時北海道大学環境科学院 修士課程2年 宇都幸那さん)

 見えてきたのは、「若さ」と「経験のなさ」がゆえの圧倒的な自信のなさ。

 

自信のなさと求められる「若者らしさ」とのはざまで

 さて、ときは現在に戻し…。

 当時(2020年)に比べ、現在は若者、ユースに対し焦点が当たることも増えているように思います。

 例えば、「Z世代」と検索すればたくさんの最新の記事やサイトがヒットします。

 

 しかし、依然として大人世代とユース世代の関係性には課題と緊張が残ります。

 ユース世代は以下のような年功序列的で経験至上主義的(そして家父長制的な)な大人の声によって抑圧されています。

 「社会に出ていないからわからないでしょ」

 「経験がないからそんな意見を持つんでしょ」

 「慣れたらどうってことないよ」

 「稼げるようになってからものを言え」

 
 一方で、社会(大人たち)は「若者らしさ」も求めます。

「若者らしい斬新なアイデアを求めています」

「学生ならではの柔軟な思考力で今までになかったものを」

「デジタルに強い若者から発信していってほしい」

 

 この状況では、ユースは自信をなくしたり混乱したりして当然です(※2)。

 SNUGは、社会や大人こそがこの構造を理解する必要があると考えます。

 大人には「俺たちが若かったころは〜」と自分の過去の経験を披露したり、ユースに安直なアドバイスをするのではなく、適切な(難しいけど)時代背景と課題の理解が求められるのではないか。

 その上でやっと世代を超えた対等な対話への「一歩」が踏み出せるのだと考えています。

 

ユースへエンパメーメントを。

 エンパワーメント(empowerment)とは、力をあたえることを意味します。

 私たちSNUGがユース世代への取り組みを進めるのは、ユースが本来持っている自分らしさを取り戻し、自身への新たな可能性を発見するチャンスをつくりたいと考えているからです。

2021年度の環境教育・子どもワークショップ(主催:札幌市環境局)、ユースファシリテーター・グラフィッカー研修の様子。

 若いということで過剰に持ち上げもせず、かといって「経験がないくせに」と見下しもせず、ただユースがその場で自分らしくいられるような対話の場が必要です。

 エンパワーメントの上で、参加者はリーダシップも学ぶことができるのだと考えています。 

対話の技術を通してユースのリーダーシップを育む取り組み。

 

結び

 さて、今回はSNUGとユースに関して書いてみました。私たちのユース世代への想いや考えは伝わりましたか?

 ぜひご不明点、疑問等あればSNSなどを通して教えていただけたら嬉しいです。

 

 こうして振り返ると、2020年から3年が経ってもユースに対する事業をし続けられていることが改めて嬉しいなと思いました。これからもユース、子どものみなさんのエンパワーメントとそのための対話を展開します。

 

 書いていたら日付をまたいでしまい、結果的に日曜日の発行となってしまいました…。

 曜日にこだわっている方がどれくらいいらっしゃるのか不明ですが、だんだんペースを掴んでいくので温かい目で読んでくださると幸いです。

 寒くて忙しい季節も、ともに乗り越えましょうね。

 

2023年12月2日 深夜
あったか自宅にて

SNUG 代表 長谷川友子

 

お知らせ!

【ユースファシリテーター、グラフィッカー募集中!】

●長谷川友子:講師/メインファシリテーター

環境教育・子どもワークショップ/札幌市 ←Check It Out⭐️

今年もみらしるの季節がやってきた!

この企画は、みらしるに関して詳しく記載したブログはこちら

unitsnug.hatenablog.com

応募はこちらから!

 

 

参考サイトなど

(※1)https://www.jinken-net.com/close-up/20200701_1908.html

「出口 真紀子:マジョリティの特権を可視化する~差別を自分ごととしてとらえるために~|クローズアップ|東京人権啓発企業連絡会」

(最終閲覧:2023/12/2)

 

(※2)グレゴリー・ベイトソンが提唱した「(否定的)ダブルバインド」の状況といえるでしょう。

参考:https://news.mynavi.jp/article/20200919-1262966/

「ダブルバインドの意味とは - 具体例や対処法と併せて解説 (1) | マイナビニュース」

(最終閲覧:2023/12/2)